ロクスマウェの風景「中華料理店」

華僑が多い町なので中華料理店はある。しかし、インドネシアの中でもイスラムの戒律が厳しいアチェ州は、店では、なかなか酒は飲めない。お酒を飲んでいるのがばれると、シャーリア(宗教警察)の御用となってしまう。
中華料理を食べてお酒がないのは、物足りない。しかし、この町に何度も通っている遠藤さんと谷沢さんは、隠れてビールを飲める中華料理店を知っている。こっそり隠れてビールを飲むために、その中華店に何度か足を運んだ。
日本の中華料理は、日本風にアレンジされているが、ここの中華料理もインドネシア風というべきか、アチェ風の中華料理の味付けになっている。
アチェでは生野菜を食べる機会がないので、サラダを注文する。中華料理の生野菜はあまり本場では食べた記憶がない。しかし、サラダを注文した。
世界共通だろうか、ビールがまず運ばれてくる。戒律の厳しい地域だけあり、他の客を刺激しないようにビールを飲むジョッキは白いプラスチックの容器に蓋が閉じられている。中身がわからないようになっている。しかも、他の客はビールを注文しないのだろうか、ビールは生ぬるい。そのため、大き目の氷が入っている。ビールに氷を入れる感覚は、日本にいるとまずない感覚だけれども、フィリピンなどでは、当たり前の飲み方になる。よく注意してその容器を見てみると僕の容器はイスラム的な幾何学模様だ。谷沢さんの容器も同じような模様だ。遠藤さんの模様だけ、モスクの絵がかかれている。
ここはイスラム社会。
ビールを飲むなど恥を知れと云わんばかりの容器だ。
ようやくサラダが到着するが、エビの揚げ物だ。その下に生野菜が一切れ飾りでしかれている。エビの揚げ物がサラダ。生野菜のサラダを想像していたが違った。
エビをつまみにビールがすすむだろうと一口食べる。
甘い。
マヨネーズと思われたものが、練乳だった。エビに練乳をかける感覚はお酒を飲まない客のため。僕らはお酒がないところで無理してビールを飲んでいる。せっかく注文したエビの練乳を落としながら、エビを食べた。
その他の料理は、たいへんうまかった。
支払いのときに華僑の日本風の格好をした若い店員に「どこからきた?」と流暢な英語できかれた。「日本の東京です」と答えた。華僑はいつからこの町にきているのか気になったので、店員に「中国からいつきたの?」「何代前にインドネシアにきたの?」ときき続けるが、意味が通じていない。「ジャカルタに祖父は住んでいて…その…」と言うのだが、何年前かからない。遠藤さんが「300年位前じゃないの?」と日本語でつぶやいた。
練乳エビに納得がいった。