NHK紅白歌合戦

昨日、実家の話題が出たので、実家の年末について。
年末年始は、取材に行くことになり、実家に戻れなくなった。
晦日、家族の中で毎年NHK紅白歌合戦を楽しみにしているのは、今年92歳になる父方の祖母だけだ。
父親は格闘技の番組をここ数年よく見ている。
姉と母は、毎年、この日ばかりはと酒を飲んでごろごろしている。
そして、除夜の鐘を聞くと、僕もコタツでごろんと寝込み、起きたときには、のどがカラカラに乾いていて、大量の水を飲む。
毎年このスタイルで新年を迎えている。

父方の祖母の就寝時間はいつもは9時ごろだが、この日ばかりは、11時ごろまで起きている。
いつもはチャンネルを牛耳っている父は、この日わずかながら、その権利を祖母に明渡す。しかも、「来年は見られんかもしれんけんね」といって祖母にチャンネルを預ける。
字面だけでは悲しいが、祖母に対する素直になれない父親の愛情表現である。(親父ごめん!!)

祖母は、紅白歌合戦を楽しみにしている。
祖母は、トリあたりで歌うの数名を見ると、結果を見らないまま安心して寝る。
僕が「結果は見らんでよかとね」そう聞くと、祖母は「ぬるもん(寝ます)」と言って部屋に去ってゆく。
祖母にとっては、結果はさほど重要ではない。
待てよ。

祖母は、歌の結果に黒白をつける歌合戦に意味を見出していない。
父が見るのを好む格闘技は、試合の内容ではっきりと黒白がつくけど、祖母の好きな歌合戦は、歌を感じることが全てであり、その内容に優劣をつけることに意味がない。
そもそも、歌は人の心に訴えるものであり、優劣の評価の対象ではない。
そして、NHKは千年以上も前から使われている「合戦」と言う言葉を今も使っている。
人々が、戦いに嫌気が差し、寛容と共存を目指そうと思っている時代に。
かなり、「合戦」は今の時代に適合していない。
意味のない合戦だ。
92歳の祖母は、生きた化石のような人だが、感覚だけは僕以上に鋭い。