〔マザリシャリフ〕

「マザリへ」
昨日、マザリシャリフへ移動の予定だったが、本日、移動になった。アセフ・大学生の立候補者(25)がおとといの夜、移動ができなくなったことを、電話で伝えてきた。彼と一緒にマザリに行く人の車が故障していると言うことだった。
そのため、一日遅れて今日の朝、出発だった。
朝、アセフを迎えに、彼の自宅へ行く。彼と同行して、マザリに行くのは、イランの映画監督とそのスタッフだった。イランの映画監督は、40歳のアフガン人だ。以前、彼の動向を撮影していたときに、知り合った。
監督の名前は一度聞いたままで詳しくは知らないが、彼の持つ機材から、彼がきちんとした監督だということは分かった。映画監督は、本日、途中から合流すると言うことになる。
アセフが、出発の準備をしているときから、撮影が始まった。車に乗ってすぐに、インタビューを行う。僕と同世代の意見らしく、選挙の結果次第で、今後の人生を考えているという。
アセフは大学を卒業して、学校の先生になるかもしれないといった。この選挙でいろんな事を知ったのだろう。もともと政治家になることが夢ではなかったのかもしれない。控えめな彼の性格は、周りに押されて出馬した方が、納得がいく。このことに関しては、まだ未確認なので、何とも言えないが、彼といると、そう感じてしまう。
ただ、アセフは、世の中のおかしいと思うことを何らかの形で表現しようとしたのかもしれない。そこを明日聞いてみたいとおもう。何が彼に選挙に参加させたのだろうか。日本の同世代の感覚では、まず見かけない行動なので、ここを聞いてみたいと思った。
もっといろんな事を聞きたかったのだが、彼が車を乗り換える。実際、初め、彼と車に乗っている時間は、30分程度だった。
今後、13時頃まで、別の車に乗る。要するに、2つの車に分かれた。後ろから、彼を追うことにした。車の中でずっと一緒にいてカメラが回るのも疲れるのかもしれない。そう自分を納得させた。
前に、イラン人の監督と、彼が車に乗っている。しかし、今日、通訳のモハマディンが手配した車は、4WDだ。坂道を登るとき、遅い。ギアが5速まで行かない。アセフをのせた車は、とっくの先に前に行った。
正面から、ロングの絵で、彼がマザリシャリフに行く車の外観を待ちかまえて正面から撮りたかった。しかし、車が遅かったので、追いつけなかった。彼との待ち合わせの場所に着いた。
彼は、そこで昼食をとるが、僕らは車の中で、メロンを食べた。メロンの味は格別だった。ぬるいが甘い。長距離移動のとき、こちらのメロンは水がわりになる。車の中でメロンを切ってそのまま食べる。
マザリシャリフに到着する。ここは、ブルーモスク・ハザラットアリや絨毯で有名な町だ。カーブルと違い、この町では、女性の殆どがブルカを着用している。また、ここはウズベク族・タジク族・トルコ族・ハザラ族などたくさんの民族がいる。町中に、トルコで有名なドネルカバブが町の至る所にある。多国籍な雰囲気が漂う。
ドネルカバブはカーブル・ペシャワール・ジャララバードでは見たことがない。ドネルカバブを置く食堂で見かけたハザラ族の男の顔つきは、横綱朝青龍にそっくりだった。
ハザラの男が飯を食い終わって、茶を飲もうとしたときにカメラを向けようとしたが、男の目つきが鋭い。カメラを持っているのを、目を細めて睨むわけでもなく、眉間にしわを寄せるわけでもなく、ただ見ている。カメラを向けられて、笑顔やリアクションをせず、ただ見ている視線が鋭い。そこは、僕が、いろんな共通点を感じている日本の田舎のヤンキーとは違うところかもしれない。
マザリシャリフは、ブルーモスク(ハザラット・アリ)を中心に8時頃、ネットカフェを含む全ての店が閉まった。電気は20時間ほど来ているが、小さな商店は、ガスランプをともしていた。部屋の電気を夜中に消して、外に出て空を見ると、一面、星空が広がっていた。日本でおなじみのオリオン座を探そうとしたが、星が多くどこにあるのかいまいちよく分からなかった。