「牛肉屋の男に感謝」

「羊肉屋と牛肉屋」


これまで撮った素材のコピーを行う。コピーと言ってもこちらから日本に素材を題材ごとにまとめてコピーして送る。その間、対訳やコンテンツをできるだけ作る。


電気事情のため、こちらで作業を行う場合、昨日21日の夜7時から明け方の3時までが可能だった。24時間電気が来ているわけではない。そのため、12時からジェネレーターを使って、作業を行った。これで、どういう絵がとれているのか、確認ができた。本日も、同じようにラッシュを作った。



明日が、金曜日なので休日だ。明後日までの作業を確認して、今日はゆっくりするかと言うことになった。渡辺さんがアフガン入りしてから、初めて休息が入った。



数日前、羊肉を食った。こちらでは、牛肉と羊肉の値段では、羊の方が高い。羊肉を嫌いな方もいると思うが、日本で食べる羊肉とこちらで食べる羊肉は、別物のように味が違う。こちらの肉屋は、肉を店の前に干している。鮮度がいい。その日に賭殺を行った肉を食べる。肉を店の前に干すなんて考えられないかもしれないが、その日から数日後までに食べられるので、かなり贅沢だ。干している肉の周りには蜂があふれている。肉食の蜂だ。大きさも、日本のスズメバチのような大きさだ。こちらの蜂は、刺さないのかと思うが、人に関心がゆくより、目の前の肉を食うことに夢中になっている。蜂がいても、肉屋の男は気にしない。蜂がいるので、他の虫が寄りつかない。そのため、周りにハエはほとんどいない。蜂がいるから来ない。



羊肉屋の男は、無愛想だった。ほとんど喋らない。こちらから「何キロ必要だと」と言わないと、反応しない。干された肉を骨ごとオノで切る。そして、部分を説明すれば、その部分を切ってくれる。肉はかたまりで渡される。



羊肉屋には、「ミンチにしてくれ」とこちらから言わないと、やってくれない。ミンチにするというと「タマネギは必要かと聞いてきた」こちらでミンチには日本で食べるハンバーグのように、タマネギが入っている。そうなると、ハンバーグを食べられる。そう言うことを渡辺さんに食卓で話したら、今度、ハンバーグを食べようとなった。



本日は牛肉でハンバーグを食べることにした。夕方遅く牛肉を買いに行ったが、牛肉屋の男は売れないという。「なんでかいな?」と聞いても、牛肉屋の男はダリ語しか話さない。雰囲気で、いやがっているようだ。近所にある羊肉屋も牛肉屋も両者とも男は無口だ。



そうだ!こちらの夜7時は閉店時間から30分ほど過ぎている時間ではないか。牛肉屋は洗ったばかりのミンチ機を使いたくないのだろう。


そんな事情を察したが、あえて無理を言う。渡辺さんがハンバーグを食べたいと言ったのだから。買ってこようと思った。周りにはここ以外肉を吊している店は見あたらない。



どうしても今日肉が必要です。日本から来て、ここのコフテ(挽肉)を食べたいですと頼んでみた。


無口な牛肉屋の親父は、ミンチにしてくれた。しかし、お金もぼったくらず、正規の料金で引き受けた。遅い時間に無理してミンチ肉をかったので、牛肉屋の男に礼を言うと、ダリ語で何か言った。意味は分からなかったが、嫌な顔をしていない。



その彼の顔には、深い何かがある気がした。肉屋は、毎日牛を賭殺をしている。否が応でも命を、毎日考えなければならないのだろう。



その後、牛肉屋の男は、無言で使った機材をタオルで拭き始めた。



出来上がったハンバーグはおいしかった。



牛肉屋の男に感謝。