〔選挙当日〕

「選挙当日」


選挙が行われた。
車窓から満月が沈む。


朝、車から流れるラジオで「選挙について」と言うフレーズを何度も聞いた。今朝4時に起きた。昨日、選挙準備を満タンにした。投票会場に向かった。僕が取材した投票会場は、カーブルから車で1時間のカラコム村。田舎の朝は早い。


田舎のじいさまたちは、6時だろうが関係なく20人くらい並んでいた。朝日が昇る前で、あたりはかなり明るかった。そして、投票が行われた。アフガニスタンの爺さまの表情はいい。若者に敬意を払われているからなおさらだ。白いひげの年寄りは自称90歳くらいだという。自称120歳の爺さまも選挙に来ていた。


投票用紙の候補者は「文字」ダリ語・パシュトゥー語・「イメージキャラクター」動物や果物など。「写真」の3種類の識別方法で表示される。でも、明らかに爺様にとってはかなり不親切。こちらの人は近視の人はほとんどいない。遠くを見る目が良いので、老眼だ。写真が細かく分かりにくい上に、果物の種類なんて、見分けがつかない。そして、老人のほとんどが文盲だ。爺様たちは、会場で「こんなもん読めんばい」「それにこの机に、ペンがない」「この写真の人は誰じゃ」と聞く人もいた。しかし誇り高い爺様は、誰にも頼らず聞かずの無記入で投票していた。


ぼくは、中学生の社会科の授業で、選挙で該当者がいないときの白紙投票というのはすごく意味があると聞き、これまで参加した全ての選挙は白紙投票にした。アフガンの爺様は、そんな授業を受けずに白紙投票を行っていた。午前7時頃、「選挙なんてくだらないから行くもんか」と投票所の前で言い争いをする爺様もいた。「外人は選挙なんてくだらんもんばかりアフガニスタンに持って来て、ここには農業のために水が必要なんじゃ」と大きな声で言う人もいた。それを聞く若者は「さすが爺様は、気合いが入っているな。すげーな」という。


勿論、選挙会場に若者や女性も来ていた。ただ、通訳のモハマディンは「ここは田舎だから女性の撮影は難しいだ」と言った。そのため、同世代の若者にインタビューした。こちらの若者は、見た目より老けている。アフガン人にすれば、日本人は若く見られる。同世代と思ったら、高校生だった。??でも高校生が何で選挙に来るの?と思っていたら、彼らは18歳や19歳も20歳もいる。また難民生活を海外で過ごしていたので、アフガンの高校にタリバン崩壊後、再入学したという。知り合うモノほとんどが難民生活を過ごしている。彼らに将来の夢や、希望を聞いた。みんな将来はこういう風に生きたいと教えてくれた。