〔朝の風景〕〔緊張した空気〕

motokiM2005-09-14

「朝の風景」


今日も一日カーブルにいた。カーブルの交差点は、いろんな人がいる。大都市の中にいると、昨日の村では見かけない表情を目にする。交差点で、地雷で足を失った男やめくらの男が喜捨をするように頼んだり、少年が新聞やチューイングガムを売ったりしている。

今朝、交差点で立ち往生していると少年が、新聞を買うようにやってきた。通訳のモハマディンは英字新聞を買った。
しかし、僕はなにも買わなかった。
本のほとんどは、ダリ語だからわからないのと、少年の英語は僕以上に流暢だし、早口でまくし立てられて、恥ずかしくて話が出来なかった。

英語の本もあったが、買おうという気持にならなかった。よく見ると彼の背中には、リュックがあった。
これから学校に行くのだろうか。生活のために、自分で仕事をしている。

日本に生まれた僕なんて、アルバイトをやったのは、大学生の時からだった。26歳になっても実家に仕送りなんてしたことがない。新聞売りの少年は生活がかかっている。必死の形相でそれは分かった。
しかも、商売で必要な英語もしっかり喋っている。

僕は意地悪にも現地語のパシュトゥー語で「今は必要ない」と言うだけだった。
彼が普段使っている言葉はダリ語だ。少年は外国人がパシュトゥー語で話すなんて意地悪だと思ったかもしれないが、少年に英語で買うように迫られると、なんだか買うつもりになれなかった。
占領軍の言葉を生活のために覚えるのは、必要だが、アメリカが来る前のアフガニスタンにはこの風景はなかっただろう。
僕が買わないと分かると、すぐに別の外国人の乗った車を探していた。カーブルは外貨にあふれている。



「緊張した空気」


3時頃、通行止めの区域があった。有名なチキンストリートから1キロほど離れた場所だ。車を運転する通訳のモハマディンはそこに行くことを薦めた。通行止めになった理由は、ある立候補者が、彼が武器を隠し持っているという。それで選挙が取り消しになった。明日、それの審議が行われる。取り消し阻止の抗議だった。抗議にしてはいささか派手で、立候補者と、警官が殴り合いになった。銃声は聞こえなかったが、一触即発の気配がした。


立候補者は軍閥。テレビ時代劇のセリフ「みなのものゆくぞ!」と言うかけ声に村の若い衆を総動員してカーブルの町へやって来た。そもそも、武器を隠し持っている軍閥が選挙に出ていることは周知の事のようだ。他にも、この手の選挙に立候補している軍閥はいる。軍閥が武器を捨てているわけはない。以前DNAで取材させていただいたコマンダーも、3年前までは武器を隠し持っていた。そのコマンダーも次の選挙に出ることになっている。


もし本当に、今回立候補している軍閥の全てが、選挙のために自らの武器の全てを捨てたならどうなるだろうか。今回の行動が無視されるのならば、このような抗議が、これから続発するかもしれないと感じた。軍閥が利権を持っている地域で、だれも武器を捨てる事なんてできない