〔インド人コミュニティ〕

「インド人コミュニティ」


現在、渡辺氏と若い女性の候補者を追っている。前回も説明したと思うが、彼女はカーブル生まれのイラン育ちの26歳。名前はサブリーナさん。彼女は演説のために、カーブル市にあるシーク寺院を訪れる。シーク教徒は普通イメージされるインド人の風体をしている。男性は頭にでかいターバンを巻く。それが男性のアイデンティティになっている。髪を切らないこともその特長となる。


また、イスラム教と違い、女性は顔を表に出すことができる。話はそれるが、アフガニスタンには、いろんな民族がいる。ご存じのように、壊されたバーミャン地方には、日本人そっくりのハザラ族がいる。彼らはチンギスハンの末裔と言われている。(自称)また、ヌーリスタン地方やその国境を越えたパキスタンのカラッシュバレーに行けば、ヨーロッパ人のような風体の人々が暮らしている。


彼らはアレキサンダー大王の末裔だと言っている(自称)彼らシーク教徒は、商用のために定住している。その寺院を彼女が訪問し、演説することになった。寺院は、内戦の影響でボロボロにこわされていた。寺院の中にいると、自然にお茶を配られる。小さな子どもがお茶を配るお手伝いをしている。これはシーク教の総本山があるインドのアムリツッアルでも、おなじような風景に出くわしたことがある。


5年前、私が貧乏旅行をしていたときに、インドのアムリツッアルのシーク寺院では、ただでご飯が頂け、なんとベッドもただで分けてもらえる場所があると聞いて、立ち寄ったことがあった。その時以来、シーク教徒のインド人にはお世話になったという気持が強かったので、今回、こうしてカーブルでご縁を持てたことが良かった。

選挙に出るサブリーナさんは、シーク教の寺院の中で演説した。寺院の中には、シーク教徒がいる。彼女の支援者がビラを配ったが、シーク教徒の反応はいまいち薄かった。残念なことにビラを手にして、それを熱心に読む姿は、見かけられなかった。しかし、その後、寺院の外でシーク教徒男性を中心にインタビューを行った。「彼女をどう思うのか」と言うことに関してだ。


彼らから返ってきた答は「彼女はとても賢明なので、彼女に投票したい」と言う返事だった。同じ答が繰り返されるので、通訳のモハマディンに「具体的に彼女のどこがいいのか聞いてくれ」と頼んだところ、「みんなは話の上で、彼女のことをいいと言っているだけだから、どこがいいかと具体的な返事をもらうのは難しい」と返ってきた。言葉そのものを通訳するのが彼の仕事だが、彼は周りの反応や、言葉のニュアンスから彼女のことを指示する人間かどうかを鼻でかぎ分けていたようだ。アフガニスタンにおけるシーク教徒は、確実にマイノリティだ。彼らはできるだけ、周りとトラブルを避けるようにして暮らしてきたという。


そもそも、イスラム教徒が99%を超える国において、異教徒が生きていく難しさを想像すれば納得がいった。そのため、彼女のいい点悪い点を冷静に判断し、インタビューに答えるのではなく、カメラを持つ人間に対して、彼らが、どんな答を望んでいるのか冷静に判断して、答えていたようだ。僕はまだまだ甘い。貧乏旅行中、華僑とシーク教徒が器用に商売をしているところを見かけたことがある。その土地に根を張ってどうやって、商売をしているのか。関心を持っていたところ、今日の出来事と出くわした。周りに敵を作らずに、彼らシーク教徒は、世界中で商売を続けていくのだろう。そう感じて、寺院の外に出たとき、サブリーナさんはすでに別の場所に移動していた。